前回お送りした第二章では、中国の自動車産業政策を整理し、政策がどのように新エネルギーを浸透させてきたか、中資系サプライヤーが構造的な優位性をどのように作り上げていったかについて詳細に分析した。
自動車業界の重要な変革のトレンド「SDV(ソフトウェアによって定義される自動車)」によって起きる変化は、もう一つのトレンド「電動化」が直観的であるのに反し、静かに目立たず進んでいく変化であるが、長期的な影響を見積もることが容易ではないという点ではどちらも同じである。
そこで、今回の第三章では、中国におけるSDVの発展経緯、そして、電動化が成熟段階に入っていく中で、SDVはどのようにそれに関り、業界変革を次の段階に進める追い風となるのか、この点を中心に分析していく。
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1.スマート化の変革を受け入れる消費者
SDV時代の主な推進力は、電動化の政策ドリブン中心とは異なり、中国の消費者によるものが多い。若年化、家族単位化、高度なデジタル化という特徴の消費層がモバイルインターネットの利用習慣を自動車に持ち込み、スマートコックピットや自動運転、エコシステム連携に対する高い期待を持つ、こういった需要サイドが業界のスマート化転換加速を要求し続けている。
2. SDVがもたらす「カーブでの追い越し」の機会
SDV化の流れの中、エンジニアの優位性、完備された自動車産業チェーン、成熟したソフトウェアとアルゴリズムのエコシステム、迅速なイテレーション能力を後ろ盾として、中資系OEMはスマートコックピットや自動運転等の中核的領域で競争優位性を確立しただけでなく、「カーブでの追い越し」を実現する入口をも手に入れた。
3. 技術アーキテクチャの再構築:E/Eアーキテクチャの集中化は必然の流れに
スマート化のニーズにこたえるため、E/Eアーキテクチャは伝統的な「分散型」での存続が厳しくなり、「ドメイン集中型」ないしは「中央演算+エリア制御型」へと急速に変わりつつある。ソフトウェアとハードウェアの分離、演算能力の集中化、高速通信ネットワークが土台の能力となり、その変革が車両全体の開発モデルと産業内の協業モデルに大きな影響を与えつつある。
4. 変革の影響:開発モデル、製品ライフサイクル、バリューチェーンの全面的な再構築
電動化とSDV化によって自動車の製品ライフサイクルは大きく短縮された。開発期間は24-36か月に圧縮され、OTAとソフトウェアのイテレーションが常態化、同時にバリューチェーンの主導権がソフトウェアとデータの能力を握っている主体へと移り、伝統OEMは組織体制と能力の変革を成し遂げなければ構造的に取り残されるリスクにさらされることとなった。
5. 日系OEMにとって、SDV領域での遅れは電動化以上に致命的
日系OEMは中資系、欧米系と比べ、全体的にSDV化が立ち遅れている状況にある。これを変えられないと、将来的に販売台数ベースでシェアを維持できても付加価値ベースで削られていく流れを回避することが難しくなっていく。中国におけるSDVの進展をしっかりと研究したうえで、自社に足らないものを認識することが今後の変革と能力再構築の重要な前提条件となると思われる。